現代スポーツは本当に青少年教育に役だっているのか?

武道による青少年教育

2018年スポーツ界を観て多くの問題を感じざるを得ません。
勝つことが至上の目標であり、勝たせることが成長であると考えているかぎり教育ではありません。
親御さんも勝てるチームが子供の成長にいいと安易に考えてはいけません。
人格的成長と現代スポーツははなはだ乖離しているといわざるをえません。
「諦めなければ必ず勝つ」
「練習は嘘をつかない」
「頂点ないしはもっと上を目指す」
「この悔しさは次回晴らします」
全て教育上の間違いですが、多くの人がこう言っているため麻痺してそのおかしさに気づきにくくなっています。
こういった現代スポーツの誤りをたださなければ、そこで育ちそのままその競技界のリーダーになっているスポーツ界で不祥事は永遠になくなりません。
仕組み・システムを修正することは大切ですが、そのシステムを構築する人の人格や価値観に偽りがあれば、そのシステムも偽りとなります。

基本的な問いかけです。
・スポーツの優先目的は勝つことですか?
・スポーツ自体に価値があるのではなく「試合」のために練習することがスポーツですか?
・スポーツは健康に良いのですか?
・スポーツの究極目標はオリンピック・世界選手権ですか?
・教育を司る文科省にスポーツ庁、特に代表選手強化は必要ですか?

子供はワールドカップというショーの道具ではない

サッカーワールドカップで勝つためにはどうしたらいいのか?というサッカー関係者のTV討論での意見です。
「もっと子供たちのサッカーの裾野を広げていかなければならない。」
「そのためにもっとサッカー人口を増やそう。」
そうすれば代表選手の質があがるという意見を皆でうなずいていました。
たしかに「サッカーワールドカップで勝つため」であればこの意見には価値があると思います。
しかし、何万人の子供たちは、わずか十数人の代表選手を生み出すための材料ではありません。
教育という意味では完全な主客転倒です。
もしサッカーの幹部が青少年サッカーを日本の代表サッカーを強くするためにと思ってみているならば問題です。
青少年の健全育成のために青少年スポーツは実施してほしいものです。

ちなみに駅伝で連覇している青山学院の原監督が2019年の駅伝2位の結果を受けたTV出演で、
生徒の高校からスカウティングを「仕入れ」と表現していたのにはびっくりです。
こういう人は教育の場である大学ではなく実業団?で采配してほしいです。(2019年1月4日追記)

単に限界を超えて厳しい稽古をしても精神力が高まらない

青少年教育の中でも特に重要な事は「心の成長」です。
スポーツである以上様々な身体的技術も身につける必要がありますが、心の成長が伴わなければ身につけた技術はたんなる凶器ですし、何を身につけても自分の人生には生かせません。

スポーツ教育でよく誤解されやすいのが、ある一定の限界を超えて厳しい練習をすれば、おのずと精神力が高まるという考え方です。

厳しい練習や形式上の礼儀作法を教えても、それだけで精神的な成長は望めるほど簡単なものではありません。
むしろ中途半端な指導では、身体的・技術的な強さのみを追求し、安易に大会などで勝つことが目的となってしまい、かえって心を損なう可能性があります。
優勝できたのは精神的に向上できたからという人も見受けますが、それは栄誉などを得るための執念が強くなっただけかもしれません。

スポーツに関わらず何らかの競技で負けた生徒に対して「この悔しさを忘れるな。次は必ず勝て」と指導している先生をよく見かけますが、「悔しさ」という感情は、教えなくても一般的には誰もがもっている感情であり、「悔しさ」は基本的に「相手をたたきのめす」「相手をやっつける」など、破壊へ向かいやすい、むしろ幼い心です。

本来はその「悔しさ」を越えて「素直に相手をたたえる」などの創造的な心を指導すべきでしょう。

もし「悔しさ」を指導するならば、負けた事では無く、例えば「礼節を守れなかった」「冷静さを保てなかった」など自己の未熟に対するものでなければなりません。
指導者自身の生きざまやそれに伴う、より深くわかりやすい言葉が道場生の精神的成長には欠かせません。「この先生のように自分も生きたい。」とあこがれる事もその第一歩です。

勝ち負けは相手のあることですから、どんなに「あきらめない」精神でも負けるときは負けます。
また、勝った側が「最後まであきらめないで勝てた」というのは負けた側に失礼です。
諦めなければ必ず出来ることが礼節です。
教育の本質を見極めた指導者が大切だと思います。

杉原政則 極真空手三段
極真会館グループ事務局長
極真会館東京本部長
多数の武道経験を持ち、文武両道の観点から学習道場も主催。武道を通じての青少年教育を研究し、地元小学校で定例で「空手通信」を発行。また経済分野においても武道のコラムを執筆中。
https://budo.tokyo/